十二国記のファンサイトを浩瀚夫人と予王の長編でオープンするというのはいくらなんでも無茶な事だとは解ってはいたんです。感情移入の出来るご贔屓キャラへの思いを書き手と読み手が共有する楽しさがファンサイトであり二次創作のはず。それがこれでは普通は単なる悪食としか思って頂けなかったでしょう。
では書く方としては楽しかったかと言われれば、もう二度とごめんと言いたいほど。それでもうんうん言って書き続け、最終的にはこうしてサイトまで作って連載したのには外からも私自身からもいろんな理由があり、苦労と愚痴がいっぱいでしたが、こうして書き始めてからちょうど一年目に無事終わってみれば、しかも思いもかけないほど多くの方に読んで頂けたと知った今では全てがハッピーな思い出となりました。
何よりこれのおかげで、その後マイペースで・とっても・気持ちよく・何でも・好きに・書けるようになりました。(妄想暴走歯止めなし、誰か私を停めて)
浩瀚にオムツを替えさせた女にもうコワイものはありません!
◇このおはなしについて◇
これは浩瀚jrのお話しのいわばほんの悪のりで書きかけたものです。
少年が陽子と同じ年頃になりしかもちょうど反抗期、その葛藤の物語である中編の中の劇中劇的エピソードになるはずでした。その中編そのものが増殖して手に負えなくなり連載中止、そこでママのお話しだけ独立させたものでした。
当初、浩瀚が結婚する相手ってどんなの?という野次馬的発想もあったのですが、同時進行で別の方による複数の浩瀚夫人や浩瀚jrが出てきたので、違いを強調したくてやや誇張したキャラになったきらいはあります。
しかもこれを長く抱えている間に、たとえば官って何?というテーマにすごく興味を惹かれ(なにしろ常世はいい男の官がいっぱい)、一方で景麒に興味を持つうち王気というのは麒麟だけの問題だろうかという気がして。
こうして王気とそれに捕らわれた寵臣というベースが出来ました。
そしてその他もろもろ半年分の拡大妄想が加わり長いものになってゆき、ファイルを半分に絞った後も、いったいこの物語の主旨は何?と聞かれると答えに自信がないほどいろいろてんこ盛り。
しかも予王と和州の乱の時代以外にも、その後の冢宰になってからの話しや浩瀚jrシリーズの伏線も出てくるし、さらには予王より前の時代の話からの伏線もつい混入。頭が混乱した方もいらしたのではと思います。
実はこの長編をどうしてもアップしたかった一番大きな理由のひとつが、これが浩瀚の四代の女王に跨るmy設定の要になる時代の話なので、ざっとでもいいのでまとめてみたかったのです。
◇キャラ:沙参◇
将来的に陽子がいるので、その対比でキャラを作ってきました。
ある点では共通したものを、ある点では逆を。
いわば陽子の引き立て役として作ったので、割りの悪い気の毒な役回りで、反感を感じた方も多かったかもしれません。(特に浩陽ファンは)
一言で言えば出来る女性。公私ともに恐いものなし、常世では王道の勝ち組で、順風満帆の人生でした。作為しなくてもゆうゆうと上昇して行ける人なので、意外と性格まっすぐです。
中途半端ではむしろ鼻持ちならなくなるので、徹底的にかっこよくしました。
浩瀚が仮とはいえ妻とした、そしてなによりあの浩瀚jrのママですから。
そして妻や女としては、良妻賢母や夫依存タイプではなく、もちろんべたべたした女らしさなどとは無縁です。
むしろ性別を超えたひとりとして書きたかったのですが、女をなくしたみたいなキャラではなく、とってもおしゃれ。
浩瀚や柴望とも、共学での学友のひとりとして、あるいは同じ上級の官として対等に立って、なおかつ私的な場面では女としての魅力も存分に出せるとしたのです。
つまり、浩瀚との関係も、その基本はいわば憂国の同志であり親友としての関係です。たとえば浩瀚、柴望、沙参は互いに基本的な距離は同じといえます。
そんな女性が王と出会ったために全てを失って行く。これは王という最後はすべてを巻き込んで斃れるしかない存在に、あまりに密接に関わった官の悲劇なのです。
麒麟が王を男が女を選ぶように選び最後に死なせる。では王は民や官をやはり同じようにそのすべてを含めて選ぶ事があり、そうなると決して離さないだろうと思ったのです。そこまで選ばれなかった官は適当に仕事をして私利私欲を貪りお気楽に次の朝にも生き残る。
そんな王気について、あるいは官についての発想の元に書いたものでした。
それから沙参と浩瀚は互いを愛していたのかと何度も聞かれました。
私は愛していたと思います、愛のない二人から浩瀚jrが生まれたとは思いたくないし、もし愛していなかったら、二人の夜は単なる色事。私は恋愛やメイクラブを主題にしたものはさっぱり書けなくて、人物の表現や筋の流れとして自然で必要な場面としてならなんとか書けるのですが。
あの状況でその立場などから互いに今は口には出せないものがいっぱいあったと思うのです。それを二人は身体の交わりで伝え合ったと思っています。浩瀚がおまえの身体は口より正直だと言ったのはそういう事だと思います。
ただ二人とも、この相手はやばいと思いつつ引かれ合ったというのも事実で、あの場の醸す特殊な精神状態もあったかと思います。だから乱の後すぐ別れたかもしれませんが、たとえそうでも親友としての絆は深くなって続くと思います。
実はこれは浩陽前提の掲示板で書き始めたので、意図的に適当なところで沙参には消えてもらえるように設定を作ったためでもあるのですが。
◇最後になりましたが、感謝のあとがき◇
その他途中ブログでぶつぶつ言っていたことは割愛致しますが、これはサイトで連載再開してからも、内容に癖がありすぎたため旧知の方の誰かに読んで頂けるかなあというだけで、リンクバナーも作っていませんでした。
また、検索サイトに登録しないのですかと言われたのですが、
『浩瀚夫人になる予定の女性と予王が政務に励んでいます。来週は浩瀚と子供をつくることになる帯を女王から頂きます。浩瀚はあんまり出ないけど柴望も登場です。ぜひ読みに来て下さい。』 ……来る人いるのだろうか。というわけで諦めて。
そんなサイトなのに、リンクをして下さるサイトさまもあり、たくさんの方に来て頂き本当に嬉しい誤算でした。おかげで途中から慌ててバナーを作ったりカウンターを付けたり。ついでに一人前にメールを溜めたり(すみません)。
特にリンクして下さったサイトはいずれもいつも遊びに行っている大好きで居心地の良い所ばかり、そんなところに同じサイトとしてリンクして頂けるなんて何より嬉しいことでした。
とりわけAlbatrossの翠玉さまには本当に感謝しております。
というような頼りないスタートでしたが、無事当初の目的であったこの長編の連載を終える事が出来ました。
お世話になった皆様、そして何より読んで下さった皆様に、沙参と一緒に心から感謝致します。
2005年4月29日
たま