必見豪華参加賞付き
窓を開けると訓練中の兵の声や戦車の轟音が聞こえた。
男は窓枠に座り、軍服の上着を脱ぎ捨て白いTシャツ一枚になると煙草に火をつけた。
厚手の軍服を着ていると屈強な軍人の間では華奢に見えるが、Tシャツから透けるのはしっかりとした骨格に無駄のない筋肉が薄く付き、色白な肌に包まれた細身だが強靱で張りのある肉体であった。
物心ついた頃から自分の領地の野山を駆けめぐり、そこに生きる獣を狩って育ったので、身体は鍛え込まれ、獲物を狙う勘と動きは野生の獣のそれであった。
そして見つけた獰猛な獣と向き合いねらいを定める事に迷いも恐れもなかったが、倒した獲物から流れる血を見下ろす時の不快感は何時になっても消えなかった。
そのため、軍に入っても前線に出ることなく、軍服を飾る略章や金の線の数を誇る男の陰で、静かに書類仕事をこなした。
司令本部の飾り物となることに甘んじ、家柄によって得た安全なポストにしがみついているだけと軽んじられている事も分かっているが、これが自分に出来る国を守るための仕事と思い、毎日を過ごしていた。
煙草を吸い終わると、上着を取り上げた。
軍服の力で勇気を出して戦う男もいる。だが獣に衣はいらない。
獣の姿を軍服に隠すと、男はまたペンを取り書類を開いた。
・・13℃「軍服フェア」参加作品 2004春
誰がなんと言おうと、これは景麒だと言い張っています。
あの学ランの下に隠されたすばらしさに気づいた予王はえらいっ。
参加賞としてすばらしいものを頂きました。>>
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