りょくさまの Trick or Treat! へのたまのおまけ

「 おい、暢気にこんなやつに菓子を配っていてもいいのか?」

なぜこの相手にお菓子を渡さなくてはならないのかという気はしたが、桂桂と一緒にはしゃぐ六太に負けて金平糖をしぶしぶ渡していた景麒に、遠甫を伴って現れた尚隆は声をかけた。

「おまえの主は菓子はもうありったけ巻き上げられていたぞ。あれでは誰かに悪戯してくれと言わんばかりではないか。」

この王宮中で悪戯しそうなのは、全員ここに揃っているじゃないかと、ちらりと辺りを確かめた景麒は落ち着いてそれに返事をした。
「この慶の王宮で主上に悪戯する不埒ものなどおりませぬが。」

六太は金平糖の量に不満があったのか、聞こえよがしに桂桂に一番引っ張られると痛い麒麟のしっぽの場所をちくっていた。
「上の方は割と鈍感なんだけど、下の方がな…」
こんなのが同族とは。

「悪戯するのは何もこんなガキとは限らないが。」
「さよう、いくつになっても男は餓鬼でのう、ほっほっほ。腹が減れば菓子が欲しくなるものじゃ。」
仮面のような白い容がぴくりとしたのを楽しげに見ながら延王と遠甫は頷き合った。

「先ほど、主上はまだ執務中とうかがいましたが。」
景麒は少し眼を細めて訊ねた。

「うん、うん、景麒、大丈夫だって。陽子はおまえんとこの冢宰と一緒だから。あいつの言うことなんか気にすんな。」
愛想良く六太は言った。
「ああ、冢宰っていってもうちのなら適当に干からびていて安全なんだが。」
六太の止めろと言う目つきに負けない声がさらに飛んだ。

景麒は金平糖の袋を握り締めたが、六太に取られて残り数粒しかないのを見ると、いきなり転変して楽俊をがっしと咥えた。
あわあわと逃げようとした楽俊だったが、同じ草食動物でも前歯ばかり大きい齧歯類と違って、馬に近い麒麟の歯の噛み締めるには逆らえなかった。
そして舶来ものの「銘菓」を咥えた忠犬ならぬ忠麒麟は、すばやく王気を辿っておかしの配達に飛び去った。

でもこれってあの相手にお菓子と見なして貰えるかどうか。
だいじょうぶ?>台輔

warehouse keeper TAMA
the warehouse12
素材: Tomotomo's Works